ここまで続くのが不思議。
ていうかこれアクションというかバトルだね
では、第2章。


Box.1に行く?

File.030 20171119

「はぁ・・・はぁ・・・」

男が死んだのを感じ取ると、棒への力を抜く。
すると、右手が自然に緩み、棒が乾いた音を発して床に落下した。
そして、彼は床に両手を着いた。積み上げた物が一気に崩れるかのように。

「(・・・倒した・・・けど・・・何だよ・・・これ・・・)」

息を上げながら、右でゆっくり転がる棒を睨む。

しかし、すぐに思考の焦点は別のものに切り替わった。
今度は左の方にある死体を見つめた。
長いように思えたあの戦闘。
しかし、それも数十秒の話。

「力が持たな・・・い・・・・・・?」



―――File Box.2 意と験







File.013 20171016

「(一難過ぎたが・・・問題は全く解決できていない・・・)」
ドアにたどり着くまでのほんの数秒も彼は考える。
「(まず何故、俺はここにいるのかだ・・・)」

彼は仮説を立てる。

まず、『何者かに誘拐され、記憶を消された』説。
だが、これは考えにくい。
彼を誘拐して何のメリットになるか、考えずらいからだ。

そして、『この世界は夢』説。
しかし、これもひっかかる。
これが本当なら、あの戦闘の途中で目覚めていただろう。

それか、『自分は人工生命体』説・・・も考えたが、そんなのはSFの世界の話。
「・・・結論出ず・・・か」
彼は扉の前に来るとそれを見つめる。
扉は透明だが微妙に色みがかっていた。

扉は「シャッ」と音を出して左に動いた。
扉の奥は廊下と呼べる物が左右に伸びていた。

壁の様式も、床の色も、天井も、自分が目覚めた部屋と同じだった。
やや白さの足りない白。
壁には、ちょうど腹の辺りに青いラインが伸びている。
彼は、自分の息が口から吐かれたのを感じた。
「・・・進もう」 

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廊下に足を踏み入れても彼の張り詰めた空気は変わりはしなかった。
「(・・・)」
部屋から出て右、1歩先は壁。窓もついていない行き止まりだった。
首を左にやると、廊下が伸びて・・・いるわけでもなく、歩けば30歩程の所に放射線を塞ぐような感じの頑丈な扉があった。

しかし、
「あっ・・・」
その頑丈な扉の手前と脇に、最初の部屋と同じ扉もあった。
「(何かあるかもしれないな・・・)」
まず、手前まで足を運ぶ。

首をその扉に向けると、最初の部屋と同じ間取りの部屋があったが、電気はついていない。
恐らく、使われていないのだろう。
「(次は・・・)」
そして、奥の扉へと向かう。

「・・・ここは・・・資料室・・・か」

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扉の目の前に立ってみるが、
「・・・・・・開かない」
もどかしい。彼はただそんな気持ちになった。
目の先にある、自分が欲する物。それに触れることすらできない。
その部屋には棚がところ狭しと並んでいた。
「何か鍵みたいなものは・・・と」
扉の右に壁から突き出た正方形のものがあった。
それをよく見ると、パネル式の青いテンキーがあった。
当然、正しい番号を入力すればよさそうだが、
「・・・分かんねぇ」
無駄なことだとは分かっているが、頭に手をやって考える。

しかし、分からない。当たり前のことだ。
すると、耳にかすかな音が聞こえてきた。
それは規則的で、やや低いものだった。

「・・・足音だ」

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恐らく、というか確実に『さっきの奴の仲間か何か』だと彼は瞬時に悟った。
「(資料か・・・もしくはあいつの様子見・・・)」
ここで見つかるとまずい。この状況にいるような人間なら誰でも分かることだろう。
だんだんとその足音は大きく、はっきりとしてくる。
「(とりあえず、戻ろう・・・)」
静かな駆け足で部屋へと戻る。

「・・・」
右手に力をかけながら息を殺す。
扉の右にはさっきの男。叩いた所から少しだけ血がにじんでいた。
「―――   」
足音が止む。
彼は一瞬静かに息を吐いた。

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扉が開く重圧な音が聞こえた。
「ふぅ~・・・」
大きく息を吐きながら、男がこのフロアに入ってきた。
彼には男の動きは見えていないが、大体想像はつく。
すると、男は立ち止まり、電子音が鳴った。
「(・・・!)」
間違いなく、資料室の扉を開けようとしている。
彼は声を上げたくなるのを我慢して、状況を伺う。
(Pi...Pi......Pi...Pi..........Pi...P~ シャー)
入力が終わり、扉が開き、男は足を動かす。
「(よしっ・・・このまま突っ込む・・・!)」
素早く、忍び足で扉の前へ近づく。

「(ん? ・・・っ!)」
男が振り向くと目の前には両手で棒を振り上げた彼がいた。
彼はそのまま棒を振り下げた。
「・・・!」
「ごほっ!」
棒は男の頭にクリーンヒット。
間もなく、首を横にして倒れた。
彼はその光景を黙って見つめた。 

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とにかく、資料室への侵入は成功。
彼は、この場所や、自分についての情報について探してみようと思った。
一番近くの本棚に近づき、一番上の隅のファイルを取る。
青く半透明のそれは酷く傷つき、汚れていたが、とりあえず開いてみる。
「(・・・?)」
だが、留めてあった紙の印刷は、ほとんど擦れていて、読めた物ではなかった。
「ふん・・・」 

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だが、印刷が擦れる程の時間が経っている、と考えることも容易だった。
「(何年前に刷られたんだ・・・?)」
そのファイルをくまなく見てみるが、日付は見当たらない。
静かにそのファイルを戻すと、彼にはまた新しい疑問が浮かぶ。
「(いや待て、というか今って何年なんだ・・・?)」
口に手を当て考える。

しかし、先程のように当然結論には至らない。
「くっ・・・」
思わず声を出し、本棚を見つめる。
悲観。この状況に一番似合う言葉だろう。
彼もこの二文字を頭に浮かべた。しかし、
「(・・・こんなこと思ってたって・・・何も事は進まない・・・)」
そう開き直ってこれからどうするかを考える。
「(・・・こいつらは全部、さっきみたいに読めた物ではないだろう・・・第一、重要な資料をこんな所に置く奴らなんかいない。でも、読めない物をなぜわざわざ・・・)」
彼は首を上に向け、天井の電灯にじっと目をやった。

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同時に、自分のため息が聞こえた。
首を下げ、何列にも並ぶ本棚を見る。

ここでする事がない以上、ここを離れることになる。
そうすると、もうここには戻れない。
なんとなく、もどかしい。
静かな空間で彼は思った。

けれども、その気持ちを振り払い、自分が入って来た扉へと体を向け、ほんの5,6歩、足を動かす。
扉が静寂に水を差すように音を発しながら開く。
左に首をやり、心の中で思う。
「(・・・じゃあな)」

廊下に移動。背後の扉はまた音を発し閉まる。
約1m右には例の頑丈な扉。
「(行くか・・・)」 

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厚い扉の前に立つ。
ドー、と低くでかい音を出して扉が左右にゆっくり開く。
「(ふぅ。開いてよかった・・・)」
扉の間からはこれまでと同じような廊下が見えるが、照明はやや弱かった。

扉が開き切るまで少しの間待ち、その廊下へと首を出した。
左手には水飲み場があったが、飲む気などなかった。
右手には長い廊下。目を細めてみると、奥の突きあたりは右に曲がれるようだ。
その手前にも2つの右方向の曲がり角。左には曲がり角はなく、壁と扉が並んでいた。
そして、数人の話し声も聞こえた。
「必然的に戦いは免れないな・・・」

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とは言っても、この廊下は先程の廊下よりだいぶ長く、広い。
つまり、周りに戦闘の気配を知られにくいので、一人一人潰していけば問題無さそうである。
「(問題は俺の体力が持つか、そして殺されないか、だな・・・。とにかく、できる限り見つからないように・・・)」
その広い廊下に足を踏み入れた。

それから歩いて、1つ目の曲がり角に着いた。
また壁から首を出し、曲がった先を見る。
「(1人か・・・)」
幸い、あちらの方向に向かって歩いている。
彼はそいつが過ぎるまで待っていた。
すると、
「・・・・・・誰だ?」

「(・・・っ!)」
背後からさっきの奴らとは別の男の声が聞こえた。

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重くなる心臓の鼓動。一度でも、何度でも経験したって、慣れることは無いだろう。この驚きには。
声の方に体を向けると、また同じような白い服の男がいた。(服に目が行ったのはそれを見慣れたからかもしれない)
この男も腰に鞘をつけている。しかし殺気は感じられず、そいつは右脚に体重をかけこちらに目を向けていた。
「くっ!(先制・・・!)」
右手に瞬時に力をかけ、腕を振る。
男はその動作を見て、反射的に顔の左に腕をやる。同時に男は敵対関係であることを完全に認識した。

「ずっ・・・!」
軽い当たりだったが、威力はあった。当たった部分には、濃い赤色がにじんだ。

「痛っ・・・」
男はそう言いながら、右手で剣を抜いた。
最初の奴よりもやや細くて短い剣だった。
「くっ・・・(威力は低そうだが、扱い易そうだな・・・)」
あの一撃が効いたのか、男は剣を構えながらも、顔をしかめ大きく呼吸している。
そして、息を短く吐き、剣を素早く縦に振る。
「ふっ!」
「(避けろっ!)」
狙われた左腕を先に後退させ、その次に体を後ろに動かした。
「(速い・・・隙をつくのは難しい・・・)」 

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「(それなら俺から攻める!)」
左足を軽く一歩踏み出し、右腕を後ろにやる。
「ふっ!」
素早く棒を振った。
「(受けろ・・・!)」
しかし、男の剣に受けとめられる。それと同時に高く透明な音が鳴る。
彼は最初、ただ受けられた、とだけ思っていたがその刹那、別の思考が浮かぶ。
「(・・・っ!)」

彼には腹を狙う癖があった。また、男が腹に来る棒を受けとめたのは偶然だった。

そして、受けとめた時の手と手首の位置が反撃に適していたことも偶然―――。

「ふっ!」
低めの響く声とともに、男は剣を横に振る。

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「っつ!」

残像が見えるような勢いで振られた剣。
後退し、避ける動作をとった彼。
低い体勢で彼の右腹辺りを見る男。

「・・・くっ」
彼は右腹辺りに左手をやった。
「ふっ・・・斬れはしなかったか・・・」
男は左の口角を上げた。

「っ・・・(遅かった・・・)」
彼はクリーンヒットは避けられたものの、切傷を負った。
左手は傷を抑えたままだった。

「ふぁっ!」
それをチャンスと見た男は体勢を低くし、切りかかろうとする。

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「ぐっ!」

今度は左腹に来たその剣に斬られまいと左へ棒を振る。

先程と同じような高く透明な音を出し、双方の武器は衝突。
そして、再度斬り付けようと、男の剣が先に動いた。
「っ!(今度は・・・正面!)」
その音が3回繰り返された後、彼は思った。
「(くっ・・・切り返せない・・・)」
彼は、先に動く男の剣に動きを合わせるしか方策がない。
いずれ、集中力だの体力だのが切れて斬られてしまうだろう。
さらに、さっさと戦闘を終わらせないと右腹だって持ちはしない。

攻防の狭間で彼は考える。
「・・・・・・素早さが届かない・・・・・・・・・なら!」

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「(力で・・・押し殺す・・・!)」

奴の剣は細い。故に、折れやすい・・・という安直な考えだが、この不思議な棒はそれを可能にする。そう信じた結果の考えでもあった。
男は素早い剣技を見せているが、それは剣が細く、力をあまりかけずに振っているからのこと。
さらに力をかけていないなら、剣が折れなくとも、それを奴の手から剥がせることだってできるだろう。
「(次で少し強く、そしてその次に一気にかける!)」
彼は少しにも満たない時間でこれを考えた。
その間も男は余裕の顔で過ごしていた。

「(まずは一発・・・)」
男は剣を振る。彼は今までより少し強く振る。

音は先程よりも強く響いたが、彼も男もそんなこと気づかなかった。

File.029 20171117

だが、先程よりも強い当たりに、それを受けた男は、それまでより僅かに隙が増す。
それなら、力をブーストさせる余裕が増す。2段階にしたのはこのため。

男は再び斬ろうと剣を振り始める。
そして、彼は右腹にあった左手を棒にかけ、両手で一気にそれに力をかける。

「―――っっつああああああああ!!!」

雄叫びのような声が上がる。棒には耳を刺激する程の音と共に激しく電流が走る。
そして、彼はそれを振った。

「(っ!?)」
男は一瞬驚いたが、剣を振る動作は変わらない。

「――――――」

剣と棒は輝いた。すなわち、それらは交わった。

しかし、それらが交わる瞬間はなかったかのように、鋭く、淡白な音を出し、剣は折れた。

「かぁっ!?」
男は口を開け困惑。

彼は余力を使い、男の左肋骨を狙う。
狙ってから当たるまで、とても短い時間だった。

「―――!!」
痛ましい打撃音と共に、男は声にならない音を上げ、前へと倒れた。